見つけて、掴んで、捨てる。

1995年以降、私は素晴らしい仲間に囲まれ、シンガー・ソングライターの道を歩くことになったのだけれど、ちょうどその頃、とあるバレエ雑誌の表紙で、みごとなアラセゴンを見つけて見入ってしまった、シルヴィ・ギエム。彼女は本年を持ってバレエ人生に幕を閉じます。バレエ人生の寿命は長くなったとはいえ、クラシックの「眠り」や「白鳥」は全幕は体力的に無理になってくる。ガラでパ・ドゥ・ドゥだけならOKでも全幕は恐らく今の私が踊れたとしたら1週間はベッドから起き上がれないと思う。
その雑誌で彼女を見つけてから、全てのDVD、写真集を集め、作曲以外ほどんど彼女を見ていた。私が中学1年の夏休みに札幌から東京文化会館まで観にきた「パリ・オペラ座」の公演はオペラ座の学生達(小学生)だけの出演で、その足の美しさや腕の長さをふんだんに見せ付けられ、「あぁ、私にはバレエは向いていない」と決断したきっかけにもなったのです。それに恐らくシルヴィは出演していたと思います。でも踊りたい衝動、表現したい渇望をどこにぶつけて良いのか、バレエをやめてから少しぐれました。
週5日は通っていたバレエ団をやめ、柔軟をやめ、体力を使うことをやめると、どんどん体がなまってきました。それが怖くて、ストレッチは続けています。今もです。
そんな私の夢を見せてくれたのがシルヴィだったのです。個人的に彼女のコンテンポラリーが好きです。マッツ・エッグ、ウィリアム・フォーサイス、新鋭の振付家を不動のものにしたのも彼女の踊りがあったからだと確信してるし、人の身体はそのものが芸術だと言うことも彼女の身体に教えてもらった気がします。彼女は本当にバレエに適した身体を持っています。しかもとても知的で、情熱的です。クラシックの感情を抑えるような動きは彼女を閉じ込めてしまって面白くないのです。その辺はやはりロシアバレエに任せて、アーティストである演技者をバレエを通して踊ることができるこの素晴らしさは、私は未だに欲しい表現方法です。

先日亡くなったプリセツカヤもとても男らしい女性でした。ギエムはその上を行くのではないでしょうか。フランス人の女性は本当に強いイメージです。こころから尊敬と憧れを持っています。

現在世界一といえる女性ダンサーはロシアのザハロワかもしれません。でもその礎を作ったのは間違いなくギエムです。足を高く上げすぎる彼女にNGをだしたのはイギリスでした。でも結局ロイヤルバレエ団に所属し、ロンドンに住んでいた時期もあります。最終的に誰もが彼女を認めてしまうのです。それはやはり人間性にもバレエの素質が必要だということでしょう。

バレリーナの現在の全盛期は30代前半です。それ以降は体力が落ちる一方そことの兼ね合いでどういう風にオリジナルダンスを作り上げるかがそれ以降を決めるといっても過言ではないと思います。アメリカのフェリはバレエ女優でした。「ジゼル」のように喜怒哀楽、死者まで演じるこの演目をテクニカルな部分も含めて完璧に踊りきる彼女にまた女性の強さを見ることができるでしょう。

長くなりましたが、表現に国境は無く、制限もありません。だから、日本人である自分が何故こんなに愛しているバレエをやめて音楽制作を始めたか、私には自分のことながらにしっかり理解しているつもりです。バレエの舞台を見終えた後の感覚を持っていただけるようなライブをこれからやっていこうと思っています。
もちろん踊ります。ジャズ、モダンバレエと言うよりは、もう少しコンテンポラリーバレエを取り入れていければ最高です。

10月4日に発売されるニューアルバム「Happy Ending Story」後、インストアルバムに手をつけようと考えています。ピアノと弦とシンセで奏でる、舞台の世界の音楽です。
皆様も周りを見渡し、過去を振り返り、遣り残したことをやる時期ってあるんだと思います。
それを今、私はやり始めようと思います。

カテゴライズにはもう本当に飽き飽きしてますので、今後はシンガー・ソングライターと名乗ることすらやめるんじゃないかって自分でそう思っています。
自由・・・・最高!!!!

でもまずは今やるべきことに対して誠実に真面目に取り組んでいかなければ・・・

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