騎士団長殺しを読んで

随分時間をかけて大切に読みましたね~今回は。
普段本を読むときは斜め読みっていうんでしたか、そんな感じで結構2度目に読んだらこんな描写あったのねということが多々あるんです。
今回は2度読みをしないように、文章をかみ締めながら読みました。
冬から春、長い夏が過ぎてやっと訪れた秋に読み終えるというロングラン。
といいますのも、湯船に入りながらの読書でしたので、夏場はチャプターごとに本を閉じていたからなのです。
間間に映画を100本以上観たと思います。
ですので、私が経験のないことまでもが夢に出てくる毎日です。
ちょっと病的なくらい他の人の人生を覗かせていただいております。

騎士団長殺しは(以降ネタバレ)、東日本大震災で被災された方に向けて書かれた本だと解釈いたしました。
それは最後のチャプターに入らないと、また村上春樹は井戸と壁抜けと女房に逃げられた話を書いているとか思ってしまいますが、これまでの作品とは明らかに違う、何か誰かを慰めるような部分が多く出てきます。
そこは読みながら不思議に思っていました。
海辺のカフカや世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド等と違い、決して前のめりな文体ではないのに、最後の最後まで何か期待を持たせてくれ、そして、ふっと府に落ちる物語の終わりには、いつものように「ありがとう」と呟かせてくれる村上節がご健在でした。

村上春樹氏はいわゆる団塊の世代で、武田鉄矢さんや矢沢永吉さんと同じ年齢。
いろんな文献で団塊世代のなんたるかを見聞きしてきましたが、正にという言葉が似合うお方です。
諦めながら、帰属することに依存し、抗いながら、溶け込んでいく。
凄い矛盾を抱えながら生きることが当たり前な世代なのかもしれません。
私たちは世代でものの価値観が随分と違う、急激な変化の中を生きています。
ここ20年くらい変化に乏しい空白の時代が過ぎ、いよいよ何か起こるのではないかと私たち世代は妙に勘ぐってしまいます。
でも心から何も起こらないで欲しいと願ってやみません。
普通に感じられる毎日が壊れてしまうような、そんな出来事を待って生きているわけではないのです。
私のように社交的ではないタイプの人間にとって順応することは、とてもパワーがいることですので、何卒。

池袋でブリティッシュ・ロック展が開催されているようなので、見に行こうと思っている晩春です。

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